大動脈疾患・末梢動脈疾患
目次
大動脈疾患・末梢動脈疾患について
大動脈疾患と末梢動脈疾患は、全身の血管に起こる病気です。心臓から送り出された血液を全身に運ぶ動脈に、動脈硬化や構造的な異常が生じることで、様々な症状や合併症を引き起こします。
大動脈疾患
大動脈は、心臓から直接出る体内で最も太い血管で、全身に血液を送る重要な役割を担っています。大動脈疾患には、主に大動脈瘤と大動脈解離があります。
大動脈瘤
大動脈瘤は、動脈硬化などにより大動脈の壁が弱くなり、血管が風船のように膨らむ病気です。胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤があり、多くの場合は無症状で経過しますが、瘤が大きくなると破裂のリスクが高まります。破裂すると命に関わる緊急事態となるため、早期発見と適切な経過観察が重要です。
大動脈解離
大動脈解離は、大動脈の壁が裂ける病気で、突然の激しい胸痛や背中の痛みが特徴です。緊急の治療が必要な重篤な状態であり、速やかな対応が求められます。
末梢動脈疾患
下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)
下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)は、末梢動脈疾患(PAD)の中でも下肢に発症したものを指し、主に足の動脈が動脈硬化により狭くなったり詰まったりすることで、血流が不足する病気です。(従来、閉塞性動脈硬化症(ASO)と呼ばれていた病態に相当します。)
歩行時に足のだるさや痛みが出現し、休むと治まるのが特徴的な症状です。進行すると、安静時にも痛みが現れたり、足に傷ができて治りにくくなったりします。重症の場合は、組織の壊死に至ることもあります。
糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙が主なリスク因子であり、これらの疾患を持つ方は特に注意が必要です。また、心臓や脳の血管にも動脈硬化が進行していることが多く、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まります。
頸動脈狭窄症
頸動脈狭窄症は、脳に血液を送る首の動脈(頸動脈)が動脈硬化により狭くなる病気です。脳への血流が不足したり、狭くなった部分にできた血栓(血の塊)が剥がれて脳に飛んだりすることで、脳梗塞の原因となります。
自覚症状がないまま進行することが多いのが特徴ですが、一時的に手足のしびれ・脱力、言葉が出にくい、片方の目が見えなくなるといった症状が現れることがあります。これは「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれ、本格的な脳梗塞の前触れであるため、直ちに受診が必要です。
LEADと同様、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙が主なリスク因子です。首の血管に動脈硬化がある場合、心臓の冠動脈や足の血管も狭くなっている可能性が高いため、全身の血管の状態をあわせて確認することが重要です。
主な症状
大動脈疾患の症状
大動脈瘤は、多くの場合で無症状のまま経過します。健康診断の胸部X線や腹部エコー検査で偶然発見されることが多くあります。瘤が大きくなると、胸部大動脈瘤では声のかすれや飲み込みにくさ、腹部大動脈瘤では腹部の拍動を触れることがあります。大動脈瘤が破裂すると致死的な状態になるため、早期発見が重要です。
大動脈解離では、突然の激しい胸痛や背中の痛みが特徴です。「裂けるような」「刺されるような」と表現される激痛で、痛みの場所が胸から背中、腹部へと移動することがあります。冷や汗や吐き気を伴い、意識を失うこともあります。この症状がある場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
末梢動脈疾患の症状
下肢閉塞性動脈疾患では、初期には歩行時の足のだるさや痛み、しびれなどを生じます。特徴的なのは一定の距離を歩くと足が痛くなり、休むと数分で治まる症状があることです。階段を上る、坂道を歩くといった動作で症状が出やすく、進行すると歩ける距離が徐々に短くなります。
足の冷感、足の色が青白くなる、足の傷が治りにくい、足の爪が厚くなるといった症状も現れます。さらに進行すると、安静時にも足が痛む(特に夜間)、足に潰瘍ができる、足の指が黒くなる(壊死)といった重症の症状が出現します。
足のだるさについて詳しくはこちら頸動脈狭窄症では、動脈硬化が進行しても初期には自覚症状がほとんどないことが最大の特徴です。しかし、脳への血流が一時的に不足したり、小さな血栓が飛んだりすることで、「前触れ」となる症状が現れることがあります。
特徴的なのは、突然片方の手足に力が入らなくなる、しびれを感じる、ろれつが回らない、片方の目がカーテンがかかったように見えなくなる(一過性黒内障)といった症状です。これらは「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれ、多くは数分から1時間以内に症状が完全に消失します。
一時的でも上記のような症状があった場合、あるいは症状がなくても生活習慣病のリスクをお持ちの場合は、早めに循環器内科を受診し、頸動脈エコーなどの検査を受けることをお勧めします。
当院の診断と検査
ABI(足関節上腕血圧比)検査
当院では、下肢閉塞性動脈疾患のスクリーニング検査として、ABI検査を実施しています。両腕と両足の血圧を同時に測定し、足の血圧が腕の血圧に比べてどの程度低いかを調べる検査です。痛みはなく、10分程度で終わる簡便な検査で、末梢動脈疾患の早期発見に非常に有用です。
ABI値が0.9以下の場合、下肢閉塞性動脈疾患の可能性が高くなります。糖尿病や高血圧、脂質異常症がある方、喫煙歴のある方、50歳以上の方は、症状がなくても定期的な検査をお勧めします。
血管エコー検査
血管エコー検査により、大動脈や首、足の動脈の状態を詳しく観察できます。血管の狭窄や閉塞の程度、血流速度、大動脈瘤の大きさなどを評価し、適切な治療方針を決定します。
胸部X線・心電図検査
大動脈瘤のスクリーニングとして、胸部X線検査を使用しています。心電図検査では、心臓への血流障害の有無を評価します。末梢動脈疾患の患者様は、心臓の血管にも動脈硬化が進行していることが多いため、総合的な評価が重要です。
採血検査
動脈硬化のリスク因子である脂質、血糖値などを評価します。当院では、当日結果対応を行っているため、迅速に治療方針を決定できます。
検査の詳細についてはこちら治療について
大動脈疾患の治療
大動脈瘤が小さい場合は、定期的な画像検査による経過観察を行います。血圧管理や動脈硬化の進行を防ぐ治療も重要です。瘤が一定の大きさ(胸部大動脈瘤で5〜6cm、腹部大動脈瘤で5cm程度)になると、破裂のリスクが高まるため、手術治療が検討されます。
大動脈解離は緊急の治療が必要です。当院で大動脈解離が疑われる場合は、都立墨東病院をはじめとする連携医療機関へ速やかに紹介いたします。
末梢動脈疾患の治療
治療の基本は、動脈硬化の進行を防ぐことです。最も重要なのは禁煙で、喫煙を続けると治療効果が著しく低下します。高血圧、糖尿病、脂質異常症の適切な管理も必須です。
薬物治療では、抗血小板薬により血栓形成を予防します。下肢閉塞性動脈疾患では、血流改善薬により、歩行可能距離の延長が期待できます。
運動療法は、末梢動脈疾患の治療において非常に重要です。医師や理学療法士の指導のもとで運動を行うことにより、症状の改善が期待できます。当院では理学療法士による運動指導を行い、安全に運動能力を向上させることができます。
専門的治療が必要な場合
症状が重度の場合や、薬物治療・運動療法で改善しない場合は、カテーテル治療やバイパス手術などの専門的治療が必要になります。当院では、都立墨東病院をはじめとする連携医療機関と緊密に連携し、適切なタイミングで紹介いたします。
連携医療機関について詳しくはこちらよくあるご質問(FAQ)
歩くと足が痛くなりますが、末梢動脈疾患ですか?
歩行時に足が痛くなり、休むと治まる症状は、末梢動脈疾患(下肢閉塞性動脈疾患)の可能性があります。ただし、腰椎の病気でも似た症状が出ることがあります。
大動脈瘤と言われましたが、症状がありません。治療は必要ですか?
大動脈瘤は、小さいうちは無症状のことが多いですが、大きくなると破裂のリスクが高まります。定期的な画像検査で大きさを観察し、血圧管理や動脈硬化の進行を防ぐ治療を行うことが重要です。瘤の大きさによっては手術治療が必要になります。
末梢動脈疾患は治りますか?
完全に治すことは難しいですが、適切な治療により症状を改善し、進行を遅らせることができます。特に禁煙、生活習慣病の管理、運動療法は効果的です。早期に発見し治療を開始することで、より良い結果が期待できます。
糖尿病がありますが、末梢動脈疾患のリスクは高いですか?
はい、糖尿病は末梢動脈疾患の重要なリスク因子です。糖尿病のある方は、症状がなくても定期的にABI検査を受けることをお勧めします。また、足のケアを徹底し、小さな傷でも早めに治療することが重要です。
運動すると痛いのに、運動療法が効果的というのはなぜですか?
痛みが出ない程度の運動を繰り返すことで、側副血行路(バイパスとなる新しい血管)が発達し、足への血流が改善されます。ただし、自己流で行うと危険な場合もあるため、医師や理学療法士の指導のもとで行うことが重要です。
大動脈疾患や末梢動脈疾患でお悩みの方、足のだるさや歩行時の痛みが気になる方は、亀戸ハート内科・心臓リハビリクリニックまでお気軽にご相談ください。循環器専門医がABI検査や血管エコー検査で詳しく評価し、適切な治療を提供します。土日診療も実施しておりますので、ご都合に合わせて受診していただけます。